新しい敷布団を買ったので、古いものを捨てるのだが、そのままだとかなりの大きさなので、真ん中から裁ちばさみで切って分断する。

この敷布団はたしか自分が実家から持ってきたやつで、ということは少なくとも二十年以上、もしかすると三十年近く使い続けた可能性がある布団で、それだけの年月、我が身体を受け止めてきたのだから、なんというか、それはもはやただの布類ではなくて、それだけの時間をかけて、物質としての自分が沁み込んでいるのに加えて、その怨念というか霊気のようなものまで成分に含んでいる感もある。

それにいきなりハサミを入れて切り進むのだから、これはもう、自分の身体に直接ハサミが入っていくような錯覚をおぼえたとしても、それほど突飛な想像の飛躍ではないだろうと思う。じっさいにハサミを動かしながら、ただならぬ外科手術を自ら執り行っているような気がしてならなかった。

果たしてあっけなく二つに分割されたた敷布団は、それぞれ大きめのゴミ袋にすっぽりとおさまった。これなら燃えるゴミ扱いでふつうに出せるはず。それにしても、なぜゴミ袋二つだけなのか、ことのついでに、なぜこの僕まで一緒にゴミ袋のなかへ押し込んで、総計三つないし四つの袋で処理してしまわないのか、そこはどんな考えなのか、その了見を聞かせてもらおうじゃないかと妻に詰め寄ったのだが、忙しい彼女には他にもまだ色々とやることがあり、まともに取り合ってもらえない。