人が入ってこない柵の内側の、日当たりがよく暖かい、じっとしていればいくらでもそこにいられる場所に、猫はじっとしている。エアコン室外機の上に、すぐ脇に干されたスリッパの裏側に鼻先を近づけるようにして、猫がじっとうずくまってる。何もそんな汚れたものを、顔のそばにしてなくてもいいじゃないかと言ったのだが、猫はうるさそうに眉をひそめ、こちらを無視して眠り続ける。眠る猫は眠りに全集中力を注いでいることを隠さない。その薄く開けた眼は最小限のものしか確認する気がないことをはっきりと示す。呼びかけられても閉じた眼が数ミリ開いて、こちらを見るか見ないかのうちにまたその眼が閉じて、相手に対してあれほどまでに自己の不機嫌さを表明しながら、相手の心象をけっして悪くさせないというのは、普通出来ないことだ。