荒木経惟が撮影した上野駅前の写真。不忍口を出てすぐの上野松竹デパートだが、見ると思わず目をむくというか、ぎょっとさせられる。かの有名な東京の上野駅前であるとは信じがたい景観であり、しかし同時に、あ、なつかしい、昔はたしかにこうだったわ、という思いも同時に浮かび上がってくる。

あのあたりに成人映画の看板がひしめいていたのは、僕の記憶が確かならば、僕が大学生の90年代初頭あたりまではこんな感じだったように思うのだが…。その後いつの間にか、ポルノではなく一般映画の看板が並ぶようになった。しかし街頭に掲げられたポルノ映画のポスターや看板というもの自体、あの頃はどの街でも見かけたもので、当時は珍しくもなんともなかった。それだけ成人映画館も多くて、知らない街をはじめて訪れると、たいてい駅周辺のどこかにはあった気がする。

それにしてもこのような景色を実際に通り過ぎつつ、自分がそういう時代を生きてきたという事実にいまさら驚かされる。まさか、こんなだっけ、こんな非常識な景色を横目にかつては歩いていたのだっけ、と思って、自分が何時代の人間かを一瞬見失いそうになる。

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