あきらかに、老人と見なされねばならぬ年恰好の男性二人が、電車内で熱っぽく語り合ってる。何かと思ったら「洋楽」の話だ。往年の有名バンドやミュージシャンの固有名詞が、次から次へ飛び出してきて、あの曲のここが良いだの、あの曲は最高だの、留まるところを知らぬ勢いで話が続いている。挙句の果てにはスマホを取り出して人目もはばからず幾つかの曲を再生して、そうそうこの部分が…などと盛り上がってる。

ひじょうに奇妙な光景に思えた。もちろんあの年代の人物が往年の「洋楽」を知っていることにまったく違和感はないどころか、彼らこそまさに現役世代だろうけど、そういうことではなくむしろあの二人が、まるで「洋楽」について居酒屋とかで熱く語り合う若者とかサラリーマンのやり取りをなぞっているかのように感じられたのだ。いわばベタ世代の人がわざわざネタ世代の真似をしてるみたいな。

まあ、好きな「洋楽」の話をする男性が、年代を問わずあのような感じになるのは仕方がないのか。幾つになっても話に夢中で周囲が眼中にない男子二人…。しかし自分も含めて、男性みなおしなべてどんどん年齢を重ねるわけだから、単にかつての若者とかサラリーマンがあの老人になったというだけか。今後はしばしばあんなお年寄りに出くわすこともあるのだろうか…と思う。