「Black Mahogani」MoodyMann


Black Mahogani [FROM US] [IMPORT]


何がジャズか?について考えても仕方が無い。聴く人それぞれのジャズ感があるので、何か超越的な掟のために、人々固有の考えや感覚をスポイルしなければならないような、絶対的なジャズとしての基準というのは、おそらく無い。


ジャズとしての基準を指し示す事はできず、ジャズとはこういうものである。と断定する事はできないのだが、それまでの歴史の中で、いつかどこかで、誰かの手によって延々と演奏され続けてきたという事実、それ自体は揺るぎが無いのであり、それらの一部はレコードというかたちに姿を変えてこの世に残っており、それら夥しい数の媒体とかかわりを持たないまま、「ジャズとはこういうものである。と断定する事はできない」と口にする事もまた、できない。


もちろん音楽は空中に解き放たれたら、そのまま消え去ってしまい、もう二度と掴み取ることはできないものかもしれなくて、レコードなどいうものはもはや音楽それ自体とは別の、形骸のみででっち上げられた瓶詰め死体のような、小銭稼ぎのチンピラ商人から売りつけられた安いポルノグラフィのようなものに過ぎないのかもしれないが、それでもそれらが集約された総体をとりあえずジャズと呼び、その只中でもがく事それ自体でしか、ジャズを体験することは出来ない。


…とか何とか書いても、上のような書き方自体が硬直的で面白くない。別にそういう硬直感を出したい訳ではまったくない。っていうか、「ジャズとは何か?」なんていう疑問に人が囚われる事はなぜだろうか?そんな事考えて、何になるのか?いや何にならなくても良いのだろうけど、…っていうか、何かになろう、何かの枠に収まろうとして、そういう疑問の形式をとりあえず召還してきてはいまいか?僕が「ジャズとは何か?」などと考えているとき、本当は、僕は別の事を考えてはいないだろうか?


…と思いつつ冷静になったら、まだMoodyMannのBlack Mahoganiが演奏中である。このアルバムはジャズなのかハウスなのか何なのか、僕は知らない。とりあえず3曲目のI Need You So Much から、4曲目のRunaway へとギャップレスで繋がっていく瞬間が、このアルバムの最も美しい瞬間なのであるが、そうであった…。これを聴いて、良い気分だった事が、こんな考えに囚われたそもそもの始まりだったのだ。(なんちて。超わざとらしい文章だったのだ)