K


誰かと誰かが親しげに話をしているという、その光景に感動するという事はたまにある。テレビのニュースでも、芸能人でも、政治家でも、アスリートのライバル同士でも、ビジネスの会合でも、あるいは外交の現場でも、国家元首同士でも、恋敵が相対するでも、争いの渦中にある当事者同士、仇同士でも、義兄弟でも、ずっと離れ離れだったあの人とあの人でも、なんでも、色々。


S先生は赴任して数年足らずの若い女性だった。僕が小学校一年のときの担任の先生で、若い女性、などという言い方は今だからそう思うので、当時、僕はS先生のことを若い女性とは思ってない。しかし、他のクラスの先生や、母親や、色々な人達と較べて、S先生は同じ女性でありながら、他の人とは何かが全然違うので、そのことがやはり、どうしても僕は嬉しいし、僕だけでなく生徒全員がそのことを不思議に誇らしい。この人が僕達の先生である。僕達のクラスは他と較べてすごい。そういう気持ちで皆が一致している。


昨日のことだが、Kが、なぜかその先生と親しげに話していたのだ。これには驚いた。ものすごい衝撃。二人の間に当たり前のように、親密な、リラックスした、華やいだ、楽しげな、自然な開放感が漂っていて、僕はたぶんその場に醸し出されているその香りを嗅いで、それに驚いた。たぶん夢なのだろうけど、夢だろうが現実だろうが、この衝撃は本物で、こうして長く生きていると、こういう事もあるのか、こんな事も現実に起こるのかと、よくよく、しみじみ思った。ものが言えなかった。まさに感無量。その気持ちがどういうものか、よくわからない。たぶん奇跡のようなことのはずなのに、それを歓びと言ってよいのかどうなのか。