川越


空は晴れていたが寒かった。冬らしい日だった。午後から川越在住の知人宅にお邪魔していた。西日で部屋全体が赤く染まり始めた頃まで歓談。


百億円くらいなら、まだどうにでもなるんだから、とにかく早いところ、次は誰がマカオに行くのかを、推薦でも公募でもいいから社内で速やかに調整して、流れが途切れないうちに早めに送り込まないと。こういうのは本当にスピードが命。その意見には僕も賛成。今躊躇したらすべては水の泡。資金が尽きた訳でもないし全然悲観するタイミングじゃない。なんだったらウチからも少しは援助できると思うので、必要に応じて連絡するようにと、知人はすでに声を掛けているそうだ。弱気が一番の敵。こういうときこそ、まわりのみんなもできるだけ応援するなりして協力すべきだと思う。


説明を聞いて、そのたびに該当の箇所を本で確認して、言及された部分の録音を聴いてみる。それでまた説明を聞いて、また本で確認して、また録音を聴いてみる。


『しなやかに動く左手のコード、主音はこの付加パートを通じて響くのだが、それを元にエヴァンスはインスピレーションを働かせたので、歌う傾向がさらに強められた。彼の軽く触るような左手の動きは主音を和らげ、小節間のゆっくりとしたテンポの隙間も、主音が鳴り続けるように響かせた。問題の音色の場合は、ほとんど聴き取れないようなミドル・コードが演奏された。限りなく繊細なタッチにより、問題のハーモニーは明示的というよりは暗示的に演奏されたが、主音とハーモニー音に近似的に使用された音は、これ以上ないほど完璧だった。
 最終的にスコット・ラファロの豊かなベース音がクッションの役割となり、音が完成された。音自体が歌っていたのだ。(「ビル・エヴァンス-ジャズ・ピアニストの肖像-」)』