酒を飲みながら、気が向くとカウンターに背を向けて、グラスを持ったまま路上にふらふらと出てあたりを見回しているのは、とてもいい気分だ。戻ると料理の皿が、目の前に生々しく照明を浴びてきらきらと光っていて、冷えたワインのボトルに細かい水滴がいっぱい付いていて、それをいつでも、それに背中を向ければ外の夜があり、車道をタクシーやトラックが行き交っていて、そのどちらにも居るというのか、その中間のところに居るのがとてもいい。昔からこうして、外で酒を飲んでいながら、店の内側と外側の中間の場所にいるのが、どうしても好きだ。客船に乗って、身を乗り出して外の海を見ながら、手や足をぶらぶらさせているように、店に掴まっているような気分だ。うっかり手を離したら、そのまま、まっさかさまに海に落ちる。そう思って、ひやっとしながら酒を飲んでいる。鼻の通りを気にする。鼻からすーっと息を吸って、液体を口に含み、広がるものを捉えようとする。あらゆる匂いを吸う。内側なら内側の、外にいれば、外の匂いを吸う。それもまた、自分の身体を外に投げ出している。別のこととことをつなごうとする。香りも感じているのは恐らく一種類に過ぎないはずで、しかしだからこそ次々と別の香りを吸い込んで、ほんの数分前や数秒前そのものが混乱するような冒険の記憶を、履歴を逆になめていってそのようであったということにされて、また振り返って外を見て夜の景色を視界に入れて、異なるもののもっと立体的な組み合わせをと思う。