天気があまり良くないし、近場で、ということで上野へ。
国立科学博物館の企画展「フローラ・ヤポニカ 日本人画家が描いた日本人の植物」。所謂ボタニカルアートと呼ばれる作品群の展示。植物の細密画だが、モチーフである植物の特徴を、図画として明確に伝えることが目的で、実物と照らし合わせたときの適合性を期待される類のものなので、極度の表層至上というかほとんど説明的ともいえるほど徹底的な描写の積み重ね。人力での、鬼のような細密作業を経て、最終的に画面内に収めてすっきりとまとめるやり方は、絵画ではなく図法および製図的というか完全に設計図面というか、いや、まさにこういうのを、真のイラストレーションというのだろうという感じ。僕も昔、小学生の頃ニュートンとか読んでいて、あの雑誌はオールカラーですごかったけれども、イラストレーションというのはいつの時代でもひたすら手描きで、なんというか驚きますね。でもじっくり見てるとやはり作者ごとの個性はあって、とくに男性はわりと個性を隠さないというか、嗜好がバレやすいというか、やや表現ぽくなる傾向が感じられるが、女性は総じてクールな感じというか、対象に過度な思い入れが無いというか、そこに余計なものを入れ込まないであっさりと仕上げて社会的な仕事として終わらせる感じというか…。いや、そんな単純な話でもないだろう。まあ、あまり、よくわからない、ということで。
そのあと都美術館に移動して「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」を観る。杉戸洋の作品はこれだけまとまった量を観るのははじめて。会場全体が、かなり考慮というか配慮の行き届いた繊細な空間に仕立て上げられている感じで、作品群一つ一つから受けるある種の柔らかい甘さと、会場の暗くて無骨な抵抗感が、なかなかほどよくブレンドされていて、ちょっとあまり見たことのないような世界が醸し出しているように思った。これは、なかなかいいんじゃないかな、と思いながら、ゆっくりと徘徊した。ぼわーっと軽くいい気分になれるという意味でとてもいい感じ。