海辺へ行く道 夏

三好銀「海辺へ行く道 夏」を再読。それはごくふつうの日々だが、今ここやそこで何が起きているのか、誰かが何をしているのか、それで何が変わったり変わらなかったりするのか、それはわかったりわからなかったりする。その景色は遮られているのか開かれているのか、出来事は連なろうとしているのか細切れになろうとしているのか、人は何を考えているのか、僕は何を気にしているのか、すべてが粉々なのか一つらなりなのか、まるでとりとめなく決められないのだが、ひとまずこのままで悪くない、できればいつまでもこのままでいいなと、まずそのことは感じている。それは読んでいるときよりもむしろ、読み終わって本を閉じたあとに、より強く感じられる。本を閉じたことで消えたものにやっと気付く。ああさっきまでの、本を開いていた時間が良かったと、失くしたことを惜しむ気持ちがわきあがってくる。