カリフラワーのピュレ

三浦哲哉「食べたくなる本」のなかで取り上げられていた料理研究家のなかでも、とくに印象的だった細川亜衣の「愛しの皿」を先日ようやく図書館で借りてきたのだが、実際にページをぱらぱらとめくってみたら、これはたしかに異様なまでに接写で撮影された料理の写真が添えられていて、これはもはや作ったものの出来上がりを確認するための写真ではなくて、あくまでも料理から受ける感覚(それを見たとき、香りを嗅いだとき、口にしたとき…などが合わさって体験された感覚)が、写真のイメージによって表現/補填されているのだろうと考えさせるようなものだった。

つまり実際に料理をつくるにあたって、写真図版は即物的な参考資料にはならないという、これだけ大判の写真集のような体裁であるにもかかわらず、相当に過激な「料理本」ではある。いや、おそらく細川亜衣をはじめとする一部の料理研究家の本は、たとえ「料理本」ではあっても、もはや「実用書」ではない何かととらえるべきもので、レシピはあくまでも付録情報にすぎないと考えたほうが良いのかもしれない。

そして、本日じっさいに作ってみた「カリフラワーのピュレ」は、予想よりはるかにすばらしいものだった。単にカリフラワーを丸ごと蒸して、柔らかくなったら粉々にすりつぶして、オリーブオイルで和えて塩胡椒で味をととのえただけの、三浦哲哉云うところの「引き算の料理」の、もっとも明快に具現化されたかのようなレシピだが、それこそ田舎風の素朴で飾らない料理を出すイタリアン系レストランとかが、いかにも前菜とかで突き出してきそうな、素材とオリーブオイルの直の味わいが、そのまま直接口の中に届くような、シンプルであることがそのまま嬉しいような料理だった。鮮度の良いカリフラワーと、ちょっと高めのオリーブオイルがあったら、絶対にこの料理をもって味わうべきだと思う。ものすごく簡単だし、これは今後も、機を見てくりかえしつくることになりそう。