配分


酒が美味しいのだけれども、口内炎が沁みるので、少し顔をしかめて、一瞬とまって、そのあとごまかしのように、ふーっと息をつくような、それをゆっくりと繰り返しているような、一人で飲むときに考えていることの二割か三割は、いやもしかすると半分は、いわば配分、今ある酒と肴の残量バランスのことではないか、肴がすべてなくなったときに、酒が一勺か二勺、器に残ってるくらいが、それを最後に飲んで余韻を味わって、やがて会計するのが、一番ちょうど良いように自分としては思っているのだが、はじめからそういう残り方、そのバランスを目指してすすめるのもばからしいし、最初は何も考えないのだが、ある程度まで来て、もう一本たのむかどうするか悩みはじめるときに、最近は僕も少し変わって、のべつまくなし杯を重ねれば良いわけではない、むしろなるべく少なめがいいのだ、もし今ここにあるこれだけで、きちんと済ませることができたら、それがいちばんきれいなのだという発想が、少しは芽生えてきたところもあるので、そうやたらと追加注文しない方針を心に定めてはいるのだが、ただし後半にきて、残った肴を片付けるようにして、飲むのとつまむのが交互にならず連続してつまむようなかたちになるのは嫌なので、そうなるくらいだったらもう一本追加してしまいたい、でも追加が遅すぎると、今度はその一本をほぼ肴なしで飲むことにもなり、それも具合がよくないので、じゃあ肴も何かもう一皿追加で、などと愚かな果てしないスパイラルへ落ち込んでいきかねない危険があるので、さあどうしようか、ここがせとぎわだと感じる瞬間というのが一度は必ずおとずれる。今日はわりと良い着地になったので良かった、途中正直、これはもう一つ追加すべきではないかとかなり真剣に悩んだが、終わってみればまずまずだった。とはいえ後半は、やはり少し急いたかもしれない、そう思うと少し心残りが生まれる。