大陸

小林秀雄杭州」「杭州より南京」「満州の印象」と続けて読んでいた。

小林秀雄を読むとき、いつも書かれた年代を確認して、著者の年齢を確認する。毎回、それをする。小林秀雄は1902年生まれだ。さすがにおぼえてしまった。戦前と戦後で、四十代が分割されるというわけだ。だからこれらを書いてる時期は三十代半ばだ。

すごくキレのいい、気持ちのいい文章を書く人、何はともあれ、どこかに書いたら必ず目を通しておきたくなるような文章を書く人、危ういことや、間違ったことを書くかもしれないけど、それよりもとにかくその持ち味を最大に尊重して書いてほしいと感じさせる、もうベテランだけど若さも感じさせる、あぶらののりきった時期にある書き手、そんな書き手としての小林秀雄を想像しながら読む、というよりも、読んでいるとそんなふうに想像させられてしまう。何かみなぎるようなもの、あふれ出るようなものがある。それは書き手の内側にあるものなのか、書き手が見て体験した外部の世界にあるものなのか、わからない。ただただ濃密な、当時の中国の景色を見ているだけのようでもある。