淀川長治

フェリーニジンジャーとフレッド」のDVDには、淀川長治の解説が収録されていて、これがいかにも淀川長治な文章で面白かったので、ひさびさに淀川長治の著作にあたりたく思って、と言ってもいま手元にあるのは共著の「映画千夜一夜」だけなので、先日図書館で借りた「淀川長治 KAWADE夢ムック 文藝別冊」という本を読んでいる。おびただしい数の著作その他によって、すでにさんざん知れ渡っているとはいえ、淀川長治という人物のとくに出自の部分をあらためてたどってみるのは、今さらながら大変興味深い。

そういえば、僕がまだ小学生のころ「私はまだかつて嫌いな人に逢ったことがない」という本を読んで、かなり強い衝撃を受けたというか、やたらとはげしく感激してしまったことがあったのを今でもおぼえている。というか淀川長治の本でこれまでまともに読んだのはこれ一冊だけではないか。で、読了後の感激さめやらぬその勢いのまま、感想文というかファンレター的な文章を書いてしまって、書いたものを翌日読み返して、その文章はたしか、そのまま闇に葬ったのだが(笑)。たぶんあんな風に、ひと時の気持ちにまかせて感情たれ流しみたいな文章をダーッと一気呵成に書いたのは、おそらく自分にとって生まれてはじめての経験だったのではないかと思う。で、そういうことをしても大抵の場合、ロクなことにならないとの教訓も同時に得られたならよかったのだが、どうだったろうか…。