久しぶりにEさんと会ってカウンターの店に行く。どんな店か知らずに行き当たりばったり、その場で電話予約して入れてもらえたのだが、順序にしたがって次々と出されるグラスワインに小さなオードブル皿が付く、いわばペアリングの食事とワインを反対にしたようなやりかたのお店だった。

なので店主が料理や酒の説明をしてくれるのだが、向うの席の客からその説明に突っ込みが入り、それに店主が言い返し、周りが笑い、店内はさながら客らと店主との掛け合い漫才がそこかしこで散発しているような状況で、なにしろ誰も彼もがやたらと喋る人たちで、こうなると客の我々も、それなりに応答しないわけには行かなくなる。客として店に来たんだから好きにすれば良いのだけど、狭い店内のカウンターの二席を我々が占めている以上、さすがに場全体を意識しないわけにはいかない。これはルールではないがマナーというか配慮のようなもので、自分らもその土俵上で楽しむための気持ちの切替えが必要になる。

そして、面白い時間を過ごせた。正直、そういう店は面倒くさいと最近は思いがちで、わかっていれば避けたのだけど、行ったら行ったで楽しかったと思える。お店が「他所の家」感を醸し出していて、そこに間違って入り込んでしまったときの気分は、僕は嫌いではない。自分がアウェイであることが意識されたまま、その空気に中途半端に絡んだまま、距離感の取りづらさをずっと感じながらも、何がしか交流が生じている状態というのは。