冬麦酒

真冬の晴れ渡った空の、まるで元日のような天気だなと思いながら、駅前まで歩く。人通りは多くてスーパーのレジもなかなかの混み具合だったけど、それ以上にドラッグストアのレジの行列がすさまじかった。駅前に三軒くらいある店のどれもが猛烈に混んでいて、仕方なく一部の買い物はあきらめた。

買出品を持って歩き回っているうちに、身体は少しずつ熱を蓄えはじめて、寒気を内側から押し返そうとするのだが、それにしても今日の寒さは筋金入りというか本格的で、身体の表面をくまなく、完璧に冷え切った状態の薄い膜を貼り付けられたような、ちょっと油断のできないくらい、なかなかの厳しさだった。

それでも帰路の途中で公園のベンチに座って、買い物袋から缶ビールを一本取り出してその場で飲んでみたのは、なんとなく今飲めたら美味しそうだと思ったからだ。

かじかむ手で、冷たい缶の栓を開けて、わき上がる泡とともに冷たい液体が口内を満たし、水路を辿るかのように身体中のあちこちへしのびこんできて、かろうじて保たれていたわずかな熱を一挙に奪われるようで身震いがして、それでもアルコールの含む、気温とはまた別のかすかな温かみが、後から追いかけるようにわき上がってくる。

缶をぐっとあおって頭上を見上げたら、黒くて細い木の枝がいくつも交差した背景に、青く澄み切ったような空が広がっている。