三枚おろし

昨日、ひさびさにアジを三枚おろしにした。出刃包丁を握るのが数カ月ぶりだったのだが、いざ始めたら序盤で手が止まった。

ゼイゴを取り、頭を落とし、その後ハラワタを取る、そのはずだけど、頭を落とすときの、包丁の刺しこみ方のイメージがさっぱり沸いてこない。

あれ、これはどこに、刃を入れるのだっけ。こうして喉元にかけて…、いやいや違う、エラを取るわけじゃない。頭を落とすならば、どこからどうやるのだったか…と、しばし考えた。

ほどなくして、そうだ…このヒレのすぐ下から、斜め上に切り落とすのだった!と、ようやく思い出すことができた。やり方を思い出したというよりも、そのようにやれば、刃の入るときにこの感触が返ってきて、結果こうなる、というイメージを取り戻せたという感じだった。

そのとき、うわ…なぜこれを、忘れてしまうかな、と。想起する全部のうち、この部分だけきれいに忘れてしまうだなんて、そんなことがあるのかと思った。

その後は、順調に進んだ。もたもたしたり、時間が掛かったりすることもなかった。だから、包丁の使い方を忘れたわけではなかった。あくまでも手順の一つだけド忘れしたのだ。いやな欠落の仕方だな…と思う。