改札口の脇で待ち合わせしていた。あと五分で着くとのメールを受信してからすでに十分以上経過していた。

改札を通り抜ける人々をぼんやりと眺めながら、これは見たことのないイメージだと思った。

老若男女という言葉があるけど、それがつまり無条件な、何の傾向も重み付けもない、バラバラな人々の集合をあらわすなら、それ以外に妥当な言葉があるのかどうか。……とにかく目の前を過ぎ行くのは、言葉にするなら、老若男女の姿だった。

年寄りよりも若者のほうが、より多く外出するわけではないし、男性より女性の方が、電車を多く利用するわけではないし、やたらと手に荷物をぶら下げた老女も、ランドセルを背負った子供も、Tシャツの浅黒い腕にタトゥーの勇ましい外国人顔の男も、誰もが非順列的にそこを通り抜けていき、そのたびに改札機からアラーム音が鳴り、耳に聴こえるのはしだいにその電子音のループシークエンスだけになってくる。

この場所で、こんなふうに定点観測することが、ふつうはないから、今見ているのが、めずらしい景色に感じるのか。いや、そうではない。これは、鉄道職員の視点だ、改札脇から毎日この景色を見ている人間も存在する。

整然と並ぶ改札機よりほのかに昇る陽炎の向こうに、誰かがいてこちらを見ていた。