化学調味料の味が嫌いではない。ものにもよるけど。たとえばカップ麺や袋麺のスープはどれも大体苦手。めんつゆも市販ドレッシングも(無添加もそうだから化学調味料の問題だけではないが)。しかし即席みそ汁とか、鰹味の顆粒出汁は、よく出来てるな、完成形だな…と思う。

大変大雑把な話として、食べ物の味わいとは、だいたいなんでもそうだけど、本来味気なくて、そっけないものだ。というか、よくわかってる味覚の組み合わせでしかないものだ。タンパクや資質、ミネラルの感じに、甘味だの苦みだの塩気だのが絡む。その組み合わせが把握できないほど複雑なのは当然だけど、基本となる要素は無数にあるわけではなくてむしろ限られる。山か海か、、動物か植物か、、くらいのことでしかないとさえ言える。

なので、化学調味料の味はさしあたり、わかりやすい発色のサインペンとか、くっきりと貼り跡のわかるガムテープとか、そういうものの役割にも近くて、まずは味覚をただちに覚醒させ、すぐにわからせてくれるような作用をもつ。あなたが口に入れたものは、この味ですよ、との指示が直接もたらされる感じ。身体や知覚感覚を、強引に食に向けさせる明確さがあって、煩雑な日常においては、これが有効な場面が多い。

もちろん化学調味料をいっさい摂取しない食生活が可能なら(健康面とかその類のことではなくあくまでも日々の味覚体験として)それに越したことはないだろうが、でもどちらもアリだなとは思う。化学調味料入りの汁物に特有の、飲んで思わず「あぁ」と溜息が出るあの味わいは、あれはあれで捨てがたい。結局それを求める程度には、身体が時には日常モードで鎮静していて、即時スタンバイの指令待ちみたいになっている、化学調味料でそのように稼働させざるをえない生き方をしてるということだ。