啜る

パスタを、ずるずると音を立てて啜る必要がないのは、そんなことをせず、ふつうにフォークで取ったものを口に運ぶだけで美味しいからだろうと思う。

蕎麦やラーメンを、ずるずると音を立てて啜る、その理由は、そうじゃないと美味しくないからだ。

蕎麦やラーメンを、フォークだけで食べるのはたぶん辛い。そうやって口に運んでも、汁やスープが、一切絡んでこない。麺以外のものが口内に入ってこないだろう。

麺とスープを、スプーンで交互に口へ運んだらどうか。もしそのように食したとしても、それが蕎麦やラーメンの味わいと同じかというと、ちょっと違うだろう。

蕎麦やラーメンを、ずるずると音を立てて、麺と汁を、一気に口内に運び込むとき、それと共に、吸い込んだ空気も口内にて合わさるのだろう。その効果というか、その感覚が、蕎麦やラーメンの味わいを、独特なものにしているのはないかと。

映画など観ていて思うけど、吸い込んで食うというのは、やはりアジア的な発明だろうと思う。逆に西洋料理の古来の歴史は、なぜそのような摂取方法、口の使い方、味わいの瞬間を自ら工夫し試す、そんな試みに対して奥手だったのか、ちょっと不思議な気もする。