エスカレーターに乗りながらのおタバコはお止めください」と、数十秒間隔でエスカレーターが繰り返し喋っている。最近はもはや外を歩きタバコをする人さえ稀なのだから、エスカレーターだけ単独で、いまだにそんな言葉を繰り返さなくても良いのでは?と思う。

まさかエスカレーターに乗る人にかぎって喫煙率が急上昇するわけでもないでしょう、昨今の世の中の喫煙率の実態とか人々の生活様式の最新状況から、ずいぶんと乗り遅れてしまっている、いつの間にか世間からズレてしまっている、そんなことではないですか?と、揶揄気味に指摘してあげる。

いいえ、世間を知らぬだなんて、決してそんなことはないのですよ。それでもエスカレーターに乗りながらのおタバコはお止めいただきたい、もし吸い殻が機構内に紛れ込んだら、場合によってはどんな事態に見舞われることか、それは私共にとって死活問題になりかねないのです、だから何度でも申し上げたい、エスカレーターに乗りながらのおタバコはお止めいただきたい、くれぐれもご遠慮いただきたい。エスカレーターは決然とした口調でぴしゃっと言い切る。