低温調理機で、アジのマリネを作ってみて思ったのだが、自分は酢の物に対して、まるで経験も実績もなく、どんな按配なら美味しいと感じられるのか、その基準を自分のなかに持ってない。これは煮物でもそうである。つまり味を決めるために加える際の、砂糖への分量感覚が、自分のなかに無いのだ。

気付いてないだけで、砂糖がその料理の下味を決めてしっかりと働いている例はままあるだろう。塩も砂糖も、どれだけ投入したら、どれだけ塩辛くなり、どれだけ甘くなるのか、そのバランスがどれだけの分量ならどう変化するのか。甘さ控えめが良いとか、その逆とか、そういうのは基準幅がしっかりとあるから言えることで、それ無しに砂糖だけ控えめにしたら、まるで未完成な味わいになってしまう。

酢の物はとくに難しい。それこそお鮨の難しさに思う。自分は蕎麦も鮨も、それをことのほか好む人からくらべたら、まるで味わうことの素人みたいなものだが、その大きな原因要素に、甘さへの無理解、酸っぱさのなかに隠された甘さへの鈍感さがあると思う。