雨上がりの半渇きの、黒と灰色と白のまだら状になった路面を、ビルの窓際から見下ろす。見慣れた景色が、少しばかり難しい色合いの組み合わせに複雑化していていつもより活き活きとして見える。

脱サラして都会の生活を捨て田舎に居を構えた若い夫婦の元をテレビ局の取材がおとずれる。ふたりの一日は自家栽培の野菜をふんだんに使った朝食の支度からはじまる。ご近所の老夫婦からお裾分けしてもらった山菜も食卓に並ぶ。都会を出てこんな田舎で暮らしてくれるだけでも、わたしらにとってはありがたいことなんですと老夫婦は顔をほころばせる。人と人との温かいふれあいがこの土地にはまだ残ってるんですと若い二人は口を揃えて言う。

利用可能な交通機関は電車か飛行機。それぞれのアクセス時間と料金の比較。さいきん出来たばかりの宿泊施設が紹介される。全部屋オーシャンビュー。大浴場の露天風呂。夕食は地元名産の海産物を中心とした和食コースで、都会では考えられないくらい新鮮な素材が、びっくりするほどのお値段でいただける。チェックアウトも少し遅めに設定してリラックスタイムを充分に満喫したい。

ホスピタリティ講師は言った。お客様の期待通りではなく期待を上回るサプライズをともなったサービスを提供する、それこそがホスピタリティ、そのために必要なのは思いやりです。わたしはおもてなしという言葉を好みません。もてなす側ともてなしを受ける側を分けて考えなくていい。思いやりは人と人の間を行き来します。お客様、同僚、上司、相手へ、他者へ関心をもちましょう。いつでも、心のどこかで誰かをおもんばかること、思いやりを忘れずに生きていくこと、それなくしてホスピタリティの実現は不可能、毎日の生活の中で、ほんの少しでいい、誰かのことを、気にかけてあげてください。

さて、横浜の赤レンガ倉庫で開催されているフードフェスタはどんな様子だろう。スタジオからレポーターの男女が呼び出される。二人は元気よく駆け回り幾つかの料理を頬張ってまた次の店へ走り出す。遠ざかる二人の背中を走って追いかけるカメラ。