祖父母

前方を、おそらく70歳前後くらいではないかと思われる老夫婦が歩いていた。老人と言っても二人共歩き方もしっかりしていて、年老いた雰囲気はあまり感じられないけど、それでも中年とか壮年ではなくたしかに老人で、並んでゆっくり歩いている。そして、白いタオルに包まれた、まだ生まれて何か月目かと思うくらいの小さな赤ちゃんをご主人が手に抱いている。おそらく孫だろうか。しばらくしてご主人、たぶん重くなってきて、立ち止まって抱えた赤ちゃんを奥さんの手に持たせようとする。今度は奥さんが赤ちゃんを抱いて、それでまた二人で歩く。どこまで行くのか知らないが、なんとなく危なっかしいというか、転んだりしないように気を付けてねと言いたくなる。息子か娘夫婦の家に行くのだろうか、親戚とかに初孫を見せにいくとか、そういうのかどうか知らない、知るわけがない。

その赤ちゃんが十五年か二十年後に、お母さんと話をしている。あなたが生れたばかりのとき、おじいちゃんとおばあちゃんがね、あなたを抱いて、あの道をずっと歩いて家まで来たのよ。まだ二人とも若かったのよ、あなたなんか、おばあちゃんがヨボヨボの頃しかおぼえてないでしょ、でも当たり前だけどまだ二人とも、ずいぶん元気だったのよ、二人で並んで、ふつうに歩いて、そこまで来てくれたんだから。