数日前に書いたことがMさんの19日付けで言及されているのを読んでいて「あれだったら(…)小学校と(…)中学校の校歌がメドレーで流れているほうがどれだけいいかわかったもんじゃない…」のくだりで、かなり笑った。いや、すいませんけど…そっちの方がぜんぜん面白いですわ。

で、Mさんの十年前の日記を読み返していて、ああ、かつてたしかに読んだぞという感触と、うそでしょこれを読んでから十年経つの?という信じがたい思いとが交差した。

最近(2023/9/5)のMさんから、以下引用させていただく。

 教室に到着したのは時間ぎりぎりだった。最初の授業なのにごめんねー! と謝る。学生らは特にいつもと変わりなし。みんなたいそう明るく歓迎してくれているのがわかる。ひさしぶりの再会ということもあってテンションも高い。このようすだったらわざわざ処理水の件について触れる必要もないなと思う。出席をとりながら、目についた学生をいろいろイジる。(…)くんは欠席。新入生の軍事訓練に付き合う係らしい。軍事訓練はほぼ九月いっぱい続くはずなのだが、彼はそうなるとまるっと一ヶ月授業に出ないことになる。それが問題なしとされるのがすごい。(…)くんは裸眼になっていた。(…)くんは今日はスピーチ練習がないので出席したが、来週以降はおそらく出席できないだろう。(…)くんは夏休み中アルバイトをしていたが、具体的にどんなバイトをしていたかは日本語で説明できないようす。(…)くんは先学期とはことなり(…)さんと隣同士で最前列に着席。当然イジらざるをえないのでイジる。みんな笑う。(…)くんはbiologyに移籍。(…)さんは英語学科に移籍。(…)さんと(…)さんのふたりは中央最前列でやる気まんまん。このふたりはいつもしっかり受け答えしてくれるので大変ありがたい存在。能力も高い。その後ろにならんで座っている(…)さん、(…)さん、(…)さん、(…)さんも同様。ありがたい。(…)さんの腕には星だのなんだのの模様が入っていた。シールのタトゥーであることは明白であるが、不良少女! 怖い! と例によっておおげさにリアクションをとる。(…)さんはインナーカラーをいれてますますかわいくなっていた。(…)さんは90年代の日本のギャルみたいに髪の毛がプリンになっている。(…)さんと(…)さんのふたりは先学期とおなじ場所を陣取ってやっぱりやる気まんまん。このふたりもありがたい。(…)さんと(…)さんの黒竜江省組は変わらず元気。勉強に対する意欲はまったくないのだが、ふたりとも愛嬌があるので授業中にいろいろイジりやすいし、こちらになついてくれているのも態度ではっきりわかる。新入りの(…)さんは広西省出身。広西省の学生を見るのははじめてかもしれない。日本語の学習歴はゼロ。以前は(…)さんとおなじ酒店管理を学んでいたというので、もしかしたら(…)さんに誘われるかたちで移ってきたのかもしれない。(…)くんは以前はbiologyを学んでいたという。日本語学習歴は四年。
 まず、日語基礎写作(一)の段取りについて、あらかじめ用意しておいた資料を使って説明。ひさしぶりに教壇にたって声を張る。途中で声がうらがえりかけた瞬間が何度かあり、マジか、このままだと声が飛ぶぞとあせり、腹式の発声を意識する。毎学期初回の授業ではおなじ感想を抱くものだが、教壇にたってただ話すだけでどっと疲れるし、喉が信じられないほど枯れる。初回の課題は「接続詞作文」。趣旨の説明を終えたところで、ぴったり休憩時間になった。毎回そう説明しているのだが、まじめなテーマの作文はこの授業でとりあげない、文章を書くという行為は絵を描いたり歌を歌ったり楽器を演奏したりするのとおなじ楽しい創造行為であるのだと説明したうえで、ふざけにふざけまくった例文を複数、本当はこちらが書いたものであるけれども先輩らの作品であると偽ったうえで紹介したので、一部の学生らはきっとやる気を出してガンガンふざけてくれると思う。とにかく中国式の「正解」がある作文という発想から少しでも逃れてほしい。

 学生らが作文に集中している授業後半はぼうっと廊下をながめたり窓の外に視線を送り出したり、あるいは学生らの手元をのぞきこんだりして過ごしていたのだが、そんなしずかなひとときにふと、こんなにもまじめで明るくてやさしいほんの子どもが、愛国教育ひとつで人生を狂わせられてしまう、その最悪の帰結のひとつがたとえば特攻隊員たちの犠牲だったんだよなと思い、強烈な怒りをおぼえる瞬間があった。そうして死を命じた連中は責任もとらず戦後ものうのうと生き延びており、その子孫が一族の過ちを腐った美辞麗句で上書きしようとしている。クソみたいな世界だ。

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