宇能鴻一郎「姫君を喰う話 宇能鴻一郎傑作短編集」より<姫君を喰う話>を読んだ。一九七〇年発表の短編作品。新鮮で美味しい牛モツ肉に関する話と、延々と続く女性との接吻から局部への愛撫に関しての話と、千年以上も前、伊勢神宮に祀られた女性(斎宮)と駆け落ちして死なせてしまい、それを悔いて遂に鬼と化して女の遺骸を喰ってしまう若い武者に関しての話、それぞれがコース料理のように出てくるのを順々に味わう感じ。テクニシャンが書いた小説という感じで、とてつもなく精巧で緻密に出来たオバケ屋敷を巡るような楽しさがある。篠田節子の解説にもあるとおり、こういう話を、幸か不幸か間違って子供の頃に読んでしまったら、もはや決して忘れることができないような強烈な読書体験として心に刻まれてしまうのだろうなと思う。