西新井駅は現在駅舎を改築中らしく、鉄骨と覆いの隙間から見える旧駅舎は、半壊状態な体で無残な姿をさらしていた。自分はもともと西新井という場所には縁がなく、足立区に二十年以上暮らしているのに、西新井を訪れる機会といえば駅から徒歩数分のショッピングモール内にTOHO系の映画館に行くだけで、しかも終わったら寄り道もせず真っ直ぐ帰ってしまう。したがって、かの有名な西新井大師にさえ今まで一度も足を運んだことがなかった、そこで今日行ってみた。
行って思ったのは、大きな寺社のある場の良さとは、参道と境内周辺に出店が出てることにある。まあ何も買わず飲み食いもしないのだけど、その気になればビールも酒も各種肴もその場で買えてその場で楽しめ、現にそうしてる人々がそのへんにいるというのは、やはりありがたいというか、かすかに心躍るというか、不思議なくつろぎの気分をおぼえるのだ。古来から寺社周辺には人々が集まり市が立って、有象無象が用もないのにそのへんをうろうろとほっつき歩いていた、そんな雰囲気が、いまだにかすかにでも残っているような錯覚をおぼえるのだ。
寺建物と境内自体は、広大で整備が行き届いていて、ある意味ものものしくて、巨大な組織体というか宗教法人の醸し出す圧に軽くのけぞるくらいなものだが、七五三の写真撮影する親子連れとか、(もしかすると我々もそろそろその仲間入りな)散歩中の老人夫婦とか、池の鯉とか、これが「暮らし」だな、と思う。漂う線香の香りが爽やかで心地よい。