坂川と呼ばれる川沿いに立ち並ぶ住宅建物の不揃い感というか、古い建物と新しい建物との混在している様子が面白くて、いつも辺りをきょろきょろと見回しながら歩く羽目になる。

土地開発というと、あたり一帯を大きく塗り替えてしまうようなやり方が普通なのだろうし、それまでの景色が跡形もなく消えてしまうのも当たり前のことだろう。ある場所を一年ぶりくらいに訪れたら、まったく知らない景色に変貌していたみたいな経験は今や珍しくもない。だからこの川沿いのように、そうではない場所を見かけるとかえって不自然な、本来はそうあるべきではない状態が今だけたまたま一時的現象のあらわれのようにさえ感じられる。

たかだか四十年前とか、その程度に古い家屋がすでにあまり残ってなくて、たまにそういう建物を見ると、なぜかハッとして、そういう建物ばかりが立ち並んでいただろう景色を一瞬だけ幻視したようになる。そんなことでいいのかと思うが、でも、そんなものだろうか。

おそらくここにきっと、生活排水など躊躇なく流されていて、かつてこの川はひどく汚れていたのだろうと思う。立ち並ぶ住まいの背後に川が流れていて、排水のための管が幾本も下に向いていて、どろどろとした汚水が異臭をはなっていた。いわば生活の裏側が、この川沿いに露出していたのだと思う。それをこの何十年かで、それなりに見栄えの良い恰好にした。みんなでがんばってやってきたことの成果がそれなんだね、ということだ。