Netlixでデヴィッド・フィンチャー「マンク」(2020年)を観る。交通事故で足を負傷した脚本家が、それでも期日までに何としてでも脚本を書き上げるため、自室に口述筆記者を呼び込み、アル中なので時折深酒して昏倒しつつも、昼夜仕事を続ける。その合間に十数年ほど前の出来事が回想場面として挿し挟まれる。

アル中でダメなおっさんだが一本筋の通った男気があって、左派でヒトラー嫌いで、ユダヤ人らの国外移出の手助けをしていたりもする。なんというか、アウトロー的ではあるけどすごくいい人である。それとくらべると、MGMの社長とか新聞屋とその愛人とか、面白くない俗物連中ばかりで、選挙だの政治運動だので、強い者はより結託し弱い者は犠牲となり、世の中はますます悪くなり、それでも主人公は奥さんを慮りつつも、ときには大いに羽目を外し、顰蹙を買い、呆れられ、怒りを買いながらも、自分の矜持を捨てずに最期までがんばるのだ。

それはいいのだけど、最初から最後まで、なぜかどうも面白くない印象。「市民ケーン」にまつわるエピソードとか、当時の(今もか)ハリウッドのエゲツなさとか、それなりに興味深いとは思った。現代のご時世と引き合わせて見ると興味深いよね、ということで作られた映画なのだとすれば、それはそうかもしれないが、それ以上ではないかな、との印象だ。

太ったゲイリー・オールドマンの息苦しそうな表情が、見終わったあとも数時間くらい脳裏にこびりつく感じで、なかなかクドくて困った。