プラットホームから電車の発車を知らせるメロディが鳴っていて、階段を駆け上っても、間に合うかどうか微妙だった。とりあえず早足で進むと、階段の中程に二人の若い女が、酔っぱらってるのか、金髪の長い髪をゆすって、あたりをはばからず甲高い声で大笑いしながら、ふらふら身体を揺らし、互いにもつれ合うようで、やがてそのまま二人とも、力が抜けたように階段にしゃがみこんで、なおも笑いは止まらず、二人で抱き合うような恰好でその場にうずくまっている。ぼくはその脇を除けるようにして、二段飛ばしでホームへ急ぐ。階段を登り切ってホームに着いたと同時に、電車のドアは閉まった。思わず、はーっと声が出た。すると後ろから声が聴こえて振り返ったら、二人がぼくのすぐ後ろにいて、笑いながらこっちを見ているのだ。ぼくはとっさに、ふふんと鼻でわらって二人を見返して、そのまま歩き出した。向こうもそれ以上何もない。おっさん一人と若い女二人が、電車に乗り遅れて、ちょっと顔を見合わせて、その場を離れただけだ。