自室より


今日という日は「頼まれ仕事」をやるための日という事で最初からそれ以外の事をほぼすべてあきらめている状況で迎えたのだが、しかし朝目覚めて外の日差しの輝かしさを見ると、さすがに少しだけでも良いから直接太陽の光を浴びたいと思った。しかし、とりあえず新聞を取りに玄関のドアを開けると、外は部屋から見える暖かそうな日差しの印象とはかけ離れた鋭く刺すような冷気がたち込めており、日向ぼっこの気分でのんびり散歩、という感じではなかった。冬である。


とりあえず近所の図書館までぶらぶら散歩する。図書館の中で雑誌のコーナーでキネマ旬報などぱらぱら読んでいて、ポン・ジュノの新作を絶対に観なくては、という気持ちにさせられる。まだ午前中で、これから予定さえなければ、このまま映画館までとっとと行ってしまいたいところだが、それは適わず。おとなしく帰宅して、そのままずーっと作業する。でも久々に爆音で音楽を聴けたので大変気持ちが良かった。普段もヘッドフォンで聴いてるけど、でもやっぱりスピーカーでそこそこの音量で聴くという事の快楽に勝るものはない。Lucianoの新作やDeadbeatのMIXやSon's Of The DragonのThe Journey Of Qui Niuなどをぶっ通しで聴く。


Lucianoという人の作品を本当に面白いと感じた事は一度もないかもしれないのだが、でもやっぱりそこそこは面白いので、今回の新作もまさにそんな感じ。本当にまあまあ良い感じ。でも意外と何度でも聴きたくなる。すごく聴きやすい感じではある。Deadbeatは男気に溢れていてとても好き。何しろRoots and Wireというアルバムが圧倒的に素晴らしかったので、本作もその収録曲を含むMIXで悪いはずが無い。気合の入った「ロック」的気概に溢れた一枚。Son's Of The DragonのThe Journey Of Qui Niuは一週間ほど前にBeatPortに新たに追加された。それまでは「The Journey (QUI NIU) - Original Mix」でしか聴いたことがなかったのだが、今回はそれよりも圧倒的にキックが図太い。これを再生させると妻が「うるさい!!いくらなんでも四つ打ちが響きすぎ!」と即座にクレームをいれに来るので、現状では妻不在時の誰も居ない状況下でのみ再生可能なほどだ。…しかし何度聴いてもこの曲は良い。無骨なキックが、なんとなくガレージ的な埃っぽくざらついた空気を感じさせ、その異常な低音の狭間で、不可解で耳障りなノイズ的中高音がひたすら漂っているだけなのだが、そのまま何の徴も無く、10分以上の時間をかけて、とても静かに徐々にうっすらと熱を帯びていく感じが素晴らしい。本当に何の展開もなく抑揚もない(いや、抑揚はほんの少しだけあるその匙加減が絶妙)ミニマル・ダブ・トラックだが、しかしこれはその手の音楽のお手本となり得るようなものだろう。


夕方になったので食事を始める。加藤陽子の「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」をやっと読み始める。戦争とは何のためにするのか?という問いに対するルソーの答え「戦争とは相手国の憲法に対する攻撃なのだ」というのが、目から鱗の気分。ほんとうにそうだ。まさにそれが戦争なのだと思う。掴み合いの喧嘩をしている状態に例えたら、お互いに相手の脳みその中に手を突っ込み合って、その制御基盤そのものを書き換えようとしているようなものなのだろう。こういう事を踏まえれば、たとえば極東軍事裁判の判決ですら、さもありなん、とさえ思えてしまう。。