冬日


ものすごく寒い夜だが、その寒さにむしろ喜んでいた。真冬のようだと思って楽しい気分になった。そのまま風に逆らいコートの裾をはためかせて歩き続けた。真正面から吹き付ける冷気に、顔も髪も鞄も手も全て感覚が無くなるほど冷たくなったが、それこそが冬だった。全身をくまなく洗うかのように、寒さの中に身をあずけて歩いた。昨日あれだけの紅葉を見たのだから、今日以降は徹底的に厳しい冬の寒さが到来すべきだと思っているのかもしれなかった。そのバランスの適切さこそを求めているのかもしれず、今だけは、寒くなれば寒くなるほど嬉しいと感じているのかもしれなかった。