夜間飛行


奥の部屋の窓を開け放したまま、こちら側の部屋の窓も開けておくと、風がひっきりなしに通り抜けていく。部屋全体が風洞になったみたいだ。ずっと風に吹かれたまま、僕もこうして書いていられる。網戸越しに見る空の様子は、銀色に濁っている。外灯の光が風に揺らめいているかのようで、ぼんやりと広がる光の明るさもいつもにくらべて粒子がこころもち粗いように見える。何か只ならぬ力の気配を秘めているような、如何にも台風を背後に控えた夜の空の、分厚い層が積み重なっている感じ。期待をもたせる特有のムード。さっき一瞬だけ雨が降ったような激しく地面を叩く音がしたようだが、あれはすぐに止んだようだ。ごうごう鳴る風の音を聴きながらそろそろ寝るか。朝になったら、外の様子がどうかが問題だ。しかしそれにしてもこういう日に「夜間飛行」を読み終わって良かった。「こういう感じ」だよなあ。というのは、「こういう天候」という意味ではなく「こういう感じ」。何と言ったらいいかわからないが、自信たっぷりに華麗に進んでいく運びの感じというのか、そうそう。すごい陶酔的。「こういう感じ」をもっと読んで知っていたい。