電車の中で、座席に座って、本を読んでいる格好のままで、眠っているときの気持ちよさはあまりにもものすごい。はっと目覚めて、本のページが指を外れてばらばらと最初の方へ戻ってしまっているのに気付いて、ああ眠ってしまったと思って、もう一度本の文字を追いかけはじめるが、面白いように簡単に、気付けばすぐにまた眠りの側にいる。そして、眠っている、意識を失っている状態が、ただひたすら、気持ちがいい。停車駅のたびごとに、はっとして駅名を確認して、また眠りに戻る。そんな落ち着きの無い浅いきわめて眠りなのに、とてつもない快楽の中に浸っているようで、正直、これほど快適なら、いつまでもこうしていたいと思うし、こんなに快適なら、土曜日や日曜日も、こうして電車に坐って一日中うたた寝していようか、それがもっとも快楽的な休日の過ごし方なのかもしれないとさえ、考えてしまうほどだ。