ピエール・ドリュ=ラ=ロシェル「ゆらめく炎」。つまらない、と言えばつまらない話だが、でもどっちかというと好きな作品だ。あまり長々と考えながら書く時間がないので、もういい加減にしか書かないけど、全編通じて、金、形態、物質に対する感受性の不思議な独特さが印象的。まさに「フォーマル」を信じることができなくなってしまった人の感覚だなと思うが、自殺をほのめかしながら未練たっぷりの大騒ぎ、な感もあり、あぁばかだな、とも思いながらも、自分の二十代の頃もぼんやり思い出す的な、極めてベタな共感レベルでも読んでしまえるという。もちろん両大戦間という時代背景を考慮すべきにせよ、そんなこと言っても、書いてあることはまあ、いつの時代も変わらないような事でしかないわな、とも思ってしまうのだが、でも重ねて云うけどどっちかというと好きな作品。
これを原作としたルイ・マルの映画「鬼火」は観てないのだが、サティの音楽が使われているとのことで、これは原作に対するある種の批評的行為というか、ある種乱暴なくらいの読み替え、リミックスではないかな、と想像する。というか、よく考えるとサティという音楽家についても、さらっと聴いたくらいのこと以上に、僕はあまりよく知らないなとも思う。というか十九世紀後半〜二十世紀を、ほんとうにちゃんとわかってないということなのだね。わかった気になってるだけで。