先日からなぜか唐突に、バービーボーイズをくりかえし聴いている。というのもApple Musicで「LIVE at SHIBUYA PUBLIC HALL 1985.09.29」というライブ盤を見つけてしまったからで、バンド初期の演奏の実況録音であるが、これがたいへん、演奏が良いのだ。各楽器の音が、よく鳴っていて、実にすばらしい。そして、こんなに律儀に、ちゃんと演奏するグループなのだということを今更のように知った。こういうざらついた感じ、こういう手触りのものが、音楽を聴くとなると、どうしても外せないのだ。
バービーボーイズは僕が中学生くらいのときに出てきたグループで、はじめて知ったのは映画「台風クラブ」の挿入歌で聴いてで、僕はなぜか「台風クラブ」は公開当時、有楽町スバル座まで観に行って、そのときはじめてこのバンドを知った。今でも「暗闇でダンス」「翔んでみせろ」だけが、このバンドの曲の中では突出して好きだ。バービーボーイズというバンドの世間一般の認知イメージと僕のそれはちょっとずれていて、僕の中では「台風クラブ」が「暗闇でダンス」してるような、けっこうヤバイイメージにうつくしく誤解しているまま、ここまで来ている。
Apple Musicはほんとうに、全部聴けてしまうので恐ろしいのだが、アルバムも、ざっと聴きなおしてみる。四半世紀ほどの時間、保持されていた記憶のなかの音楽というのは、こんな感じなのか。今聴こえているものをそう思っているのか、記憶の方に驚いているのか、よくわからなくなる。かなりおぼえているけど、それでも、細かい部分すべてに、こんなだったかと思う。当時もリアルタイムで4枚目くらいまでは聴いていたのだが、さすがに、テレビによく出てくるようになった頃には、聴かなくなってしまった。ピークは2ndと3rdであろう。1stはほとんどおぼえてない。今はじめて聴いてると言ってもいいくらいだ。しかしアルバムでも、おどろくほどシンプルというかストイックな演奏である。スタジオもライブもあまり変わらない。ベース素晴らしい。これはきっと、すごく演奏好きな人たちのバンド。そして、やっぱりギターが、まさに当時の時代を感じさせながらも、こういうギター、音も曲への乗せ方も、実にいいですねと言いたくなる。
ある意味、安い歌舞伎というか、演歌というか、クドイ韻の踏み方、一発芸的、歌謡ショー的な、どこまでも紋切り型で男女関係のお約束事を、子芝居じみた感じでやる、という感じなので、まあこういうのが嫌いな人は嫌い、というか、何とも思わない人も多いのだろうが、やはり当時は、このバンドを斬新に感じたものである。音楽のバンドが斬新である、という経験のかなり最初の方のやつだ。