外食はどこがいいのか、そういうことよりも、ただ灯りの点いている下へ行きたいだけ。夜な夜な、金曜日の、ばかな、新橋方面の、改札口から、順々に履きだされて来る、あの連中。小魚たちだね。水面の反射、揺らぐ外灯だね。ゆらゆらと揺れながら光を反射するグラスね。水溜りを避けて裏通りを通り抜けて、妙に赤い小さな鳥居をやりすごすとするじゃない。コンビニの白々とした光の影に公園がゆったりと暗闇のように広がっていたとするじゃない。そのほとりにさっきからじっと座っていたのが、今この自分だったとするじゃない。それで、ふと上を見たら、それは星の無い、青に灰色の混ざった夜空だったとして、それでそんな季節が、後から後から、来ては過ぎ、来ては過ぎ行くのだって、それがそうだとするじゃないですか。だからそれで、肺呼吸の続きを、ふとだるくなってやめたとして、そこで一口の鼻から抜けるような厳しい辛口を、口に含んだとしたじゃないですか。湿った地面の、湿った生垣の、湿った植物たちの、物静かな騒がしさに包まれていることに、じつはさっきから気付いていた、としたら、だとしたら、どうなんだろうかって、あらためて考えてみたいとして。でも、ひきつづき、それ、一貫して、まだ飲みますか。この冷たさが失われないうちに、当然ながら急ぎますよね。あわてる必要ないのに、せわしなくて恥ずかしいです。風でも、吹かせますか。係、呼びますか。それ、下げさせてテーブル片付けますか。少しさっぱりして、女将呼びますか。それで、風にあたりたい。風、注文したいね。ちょっと、そよいでもらいますか。そうそう。わはははは。髪、さらさらー、ですよね。髪さらさらー、って、そこは言いますよね。風、さあ、そこで吹いた。いやでも、六月だから。そう、昨日知っていた?昨日、花火だったんだよ?昨日、そう。知ってた?そうなの。どっちでもいいよ、さよなら。週明けまた、ゆっくりと、あらためて。そう、おい。お前。そう、あんただ。あんただよ。何やってんだよ、そう。そこで、お前は、駄目じゃないかお前は安静にしてなければ。うん、いいよ、いいからいろよ。あとで女将がそこに来るから。お前が、ちゃんとそこはやれよ。うん。うん。そうそう。で、お前さあ、そこの窓空けろよ。そう、風入れろよ。ああ、そうそう。風いいなあ。うん、風いいだろ。お前、ばかだな。ほんとうにお前死ねよ。でもいいや、風が気持ちいいや。俺は風だけでいいや。うん、どこで食べたいのか、また明日までに考えとけばいいじゃん。お前は、ばかだから、そういうのは本当に専売特許だな。はー、ばかだな。くだらないよ。わかったから、もうお前はうるさいから、すこし黙っててくれよ、もうできればこのあと静かにしてよ。耐えられないんだよ。耐えられないんだ。そう。なぜかさっきまで、錦糸町の夢見た。「中身はわからないですね。食べてみないと。」「うん。よし、食べよう。あ!」「何でした?」「何だろう、これは…。よくわからない。でも、美味い…。」夢見そう。なんだよ、これ。「おかえりなさい」「ただいま」