ボウルズ「優雅な獲物」の最初の2編「遠い挿話」「優雅な獲物」を読んだが、どちらもあまり面白いとは思えなかった。いや、たしかにこれは、ある種特異な、ちょっとほかには無いような強い作品だとは思うし、まるで残虐性が淡い夕日を浴びているような、得体のしれない抒情性とさえ言ってしまいたくもなるような気配さえ感じるのだが。まあ、これはこれで今は、はい、わかりましたという印象。しかし、まだ20ページほどしか読んでないが少なくとも「シェルタリング・スカイ」はいまの時点だけでも充分に良くて、その先を読みたい。なんかボウルズって、夫婦とか親子とかの身内がお互いにイライラして気づまりな時間をどうにかやりくりしているようなシチュエーションではもの凄くいい感じの空間をつくりあげてしまう小説家という感じがする。そこに流れるのは、たぶん個人のイラつきではなく、もう少し大きな、あまり湿度の高くない基底的気分としてのイラつき感で、その世界の未だ不透明であることへの不安と期待がそのまま登場人物を翻弄しているようで、読んでる身としては、イライラを感じていながらワクワク感があるという妙なことになる。…そういうのって結局は、今の自分の気分的なものにしっくり来る、ということの説明以上ではないのかもしれないが…