博物館


なんとなく、行くかーという感じで上野へ。博物館でも行こうか、という感じで東京国立博物館へ行った。何年ぶりだろうか。三年ぶりくらいか。今は企画展は開催されてないが、それでもけっこう観客がいる。若い人が多い。外国人も多い。


博物館には、要するに、物質が、たくさん展示されているのである。ほぼそのことだけを考えながら、ぼけーっとした気持ちのままで、館内をうろうろしていた。


縄文、弥生、古墳、平安、鎌倉、室町、安土桃山、江戸、明治、大正…各駅停車の路線のように、ずっと乗ってると、次の時代が来ただろうか。


時間、時間ねえ…と思う。


物だなあ、と思う。物はなかなか消えない。しぶとい。物は在っても無くても、ガラスの向こう側とは言え、たしかに目の前にあるように見えるから、それは一応、現実に存在すると信じている。かなり信じられることだ。


しかし、時間というものは、いきなり困る。時間は概念として急に来る。平安時代だとしたら、今から約千年前だということになる。目の前のものが、千年前だと云われてしまう。千年というのは、いきなりわからなくなる。


でも、むしろ普通のことか。千年なんて、別に普通か。ほっとけば、千年経つのか。


四十年が、それほど長大というわけではないのだし、百年もそうかもしれない。だとしたら千年もそうかもしれない。


ただし、死ぬというのが謎だから、千年も謎なのだ。


器の、ぽっかりとあいた口を見ていた。中が暗い。