最近スパークリングワインが好きで、安物を買ってきて食事のとき飲むことが多い。しかし今日は会社の帰りに、あー、今飲めたらいどんなにいいかと思って、どこかへ寄り道しようかとも思ったがそれも面倒くさくて、まあ、手っ取り早くでいいかと思って、デパート地下の販売店で小さめの瓶を買って、駅前のベンチに座ってそれを飲んだ。
しかしワインというものは、安物であるか否かに関わらず、ちゃんとしたワイングラスとまでは言わないがせめて器状のものに注いで飲むからそれなりに美味しいのであって、瓶に直接口を付けてもさほど美味しくないのだと、たしか以前も思ったけどすぐ忘れるから何度も同じ失敗ばかりして、でも今更仕方がないな…などと考えていて、そのとき前のスタバから出てきた女性がこちらの方角へ歩いてきて、僕は下を向いていたのだが、通り過ぎようとしたはずのその女性が突然僕のすぐ傍で足を止めた。何だろうと思って見上げると、女性は立ち止まって空にスマホを向けていた。写真を撮っているのか。見るとビルの向こうの空がピンク色と紫色に淡く染まっていて、その光を受けたビルもまるでテレビの色がおかしくなったみたいな妙な色相に包まれている。