夜は一人で鮨屋へ。普通ならビビッて絶対に入れないと思うような立地だけど、インターネットの便利さに頼ってセコセコと調べて自分のような者でもこうして入店しようとするのだから我ながら恥じ入り俯きたくなる感もありますが、まあ休日前でもあるし満席で断られる可能性大と予想していたのだが電話してみたらあっさり席が取れた。店に入ると先客は男女一組。その先客もほどなくして帰ってしまって客は僕一人だけに。お店を問わずなぜかこういう状況は僕の場合多いのだが、さすがに一人で押し黙っているのはかえって不自然なので、板前さんや後ろに控えてる奥さんと適当に喋りながら過ごす。僕はすし屋はそれほど行ったことがないので、とくに始まるまではわりと手持ち無沙汰というかぎこちなさを感じがちだったりするのだが、そんな話もわりとざっくばらんにして、別にそんな気取ったもんではないんでね、お客さんがお好きなようにしていただければ店はいいんですよ、順序も何も、何でもいいんですよ、握りのあとでまたつまみに戻られるお客さんだっていますよ、とか、それはまあ、理屈ではわかるんですけど、そうは言っても最初は、なかなか緊張するものですよねえ、とかそういう話。今日市場にあがったばかりだとかいう何とか貝の口中に広がる香りが春らしくてとりわけすばらしく、こういう香りこそを世の鮨好きな人たちは楽しんでいるのだろうなと思う。お酒もふだんならわりと避けがちな豊穣なやつが今の季節に限ってはふさわしいように感じもする。鮨屋独特の和の清潔さが充溢したような真っ白な空間、清潔で凜とした雰囲気、大きくしつらえられた窓ガラスの向こうは夜の暗闇に各種の光が揺らぎ反射していて、室内とのコントラストが如何にも東京の店という感じ。なかなか贅沢だわねえと思いながらその場に浸る。