雑居ビルのエレベーターの、閉まるときに赤く点滅するドアと養生されっぱなしの内壁に囲われた狭さ。目的の階でドアが開くと、そこはスマホの修理屋だったり、パソコン教室だったり、鮨屋だったり、イタリア料理店だったり、美容室だったりする。昔ならレンタルビデオショップだったり、ゲームセンターだったり、輸入レコード屋だったりした。

ドアを出ると、いきなり店の中だったりして、その場で待っていると、中の人が出てきてこちらを迎え入れる。こちらでお待ちくださいと言われて、奥の小さな席に案内される。パーテーションで囲われているだけの、来客用打ち合わせ用スペースだ。紙コップと小さなペットボトルのお茶がちまちましたトレイに乗って出てくる。幾枚もある申し込み用紙に、会社名の名義で記入して捺印する。

こうして夜遅くまで働いている人は、ご苦労なことだけど、おかげで街の夜がまだ明るいのだと思う。やることが終わってお礼を述べる。さっきの小さなエレベーターの前で、担当者はこちらに向かって深々とお辞儀をして、ドアが閉じきるまでその頭を上げない。

道路を渡ってヨドバシカメラエスカレーターの4階にのぼり、オーディオのコーナーをうろついた。もう夜遅くて、客は少なく閑散としてる。電化製品が大量に通電しただだっ広くて明るいフロアはざらざらとした埃っぽさに満ちてる。