カルボナーラ

ふだんあまり作ることも食べることもないカルボーラだが、今井真実「毎日のあたらしい料理」所収「たどり着いたカルボナーラ」のレシピにしたがって、作ってみることにした。

ボールの中にパルメザンチーズと卵をあらかじめ掻き混ぜてトロトロの状態にし、加熱したベーコンの油脂分とパスタの茹で汁をフライパンで乳化させておく。そこにベーコンの塩味をまとったパスタを加えて和えて、再びフライパンに戻して程良くなるまで加熱し、皿に盛り付ける。胡椒をふりかけて出来上がりだ。思ったよりも、すんなり出来た。

やってみて、材料の分量と、適温をあやつることのふたつを心がける、そこが醍醐味だなと思った。状態を見ながら加熱する、あるいは火を止める、盛り付けたときも、皿の上でも、状態がリアルタイムで変わっていくのが常に見えるような料理で、こういうところが面倒くささでもあり、面白味でもあり、シンプルな素材だけで、加熱しながら、ほど良いところを見極めて、さーっと盛り付けて、美味しいうちに食べるべき、そういう料理なのだ。

しかし、あまり深く考えず適当に作ったとしても、そこそこ美味しい結果にはなるみたいだ。なにしろ今回のチャレンジでは、一人前のレシピであることに気付かず、二人分(1.5人弱くらいか)のパスタ量で作ったことに後で気づいたので、すでに適当で大雑把なやりかたで作ったのと変わらない。結果としてチーズがしっかりと濃いトロトロ感少ない仕上がりとなったけれども、しかしこれでもまったく問題なく美味しい。つまりどんなやり方でも大失敗の可能性は低い(我々の元々低い基準値ならば)。

その一方で「これはすごく美味しい」と思える結果を出すには、かなり経験を重ねないとダメで、その経験の積み重ねが仕上がりに反映する料理なのだ、知れば知るほど、奥深いのだ、というのも、たしかにその通りだろうなと、想像することはできる。本書によれば「やっと納得するカルボナーラにたどり着いたのは30年後のこと」とある。

なにしろ我々はカルボナーラの「これは(今までとは比較を絶して)すごく美味しい」と感じた経験が、まだない。それを知ったら、もう元には戻れないと思えるほどのレベル…。それはいったいどんなカルボナーラなのかをまだ知らない。まずはそれを知ることからはじめた方がいい。