E O

ceroの新譜「E O」を聴く。前作にあった、異なるリズムの重なり合い、バンドの音同士がぶつかり合うかのようなダイナミックな要素は後退した感がある。演奏が全体的に、少しだけ後ろへ下がって、くぐもったような混然としたバックトラック全体として、時折差し挟まれる電信・通信ノイズめいたSE音と共に、絶え間なく不穏に響いている感じだ。とはいえそれぞれの音配置には繊細な配慮が行き届いていて、どの曲であっても前景と中景と後景の折り重なりあいが周到に仕掛けられていて、それだけで耳をそばだてさせるだけの磁力をしっかりとたたえているのが感じられる。さらには前作同様、小田朋美と角銅真実のコーラスのおかげで、相変わらず歌パートは分厚く独特の手応えをもってceroの世界をしっかりと演出するかのようで、あとつけ加えたいのは髙城晶平のボーカルが、これまででもっとも完成度高いというか、表現力がすごく繊細で豊かになった感じがした。

さらにここで歌われている言葉の数々が---自分にはまだ断片的にしか捉えられていないのだが---さらに抽象度は増してはいると思うのだが、それでもある何かが云われている、何かが現わされているということ、それが浮つかず、剥がれ落ちることなく、歌われたいことをしっかりと担う言葉で出来ているという感じがある。断片的で、内省的で、決して無条件に気分をあげてくれる言葉たちばかりではないようにも思うのだが、しかし一つ一つが、しっかりと磨き込まれている感じがある。とりわけカタカナ、外来語の、選ばれ方配置のされ方に、神経的な繊細さを感じた。