テレビで「新宿野戦病院」を見ていて、けっこう驚かされた。新たなパンデミックが襲来して世界中が慌てふためくのだが、ほんの数年前のことなのに、もうすっかり過去と化していた様々なものが、いきなり一挙に噴出してきたという感じがすごかった。しかも当時こんな風に「あの状況」を表現するのは、おそらく皆無というか不可能だったと思う。そうだったなあ、けっこう絶望的な出来事がたくさんあったよなあ、でも現在だって、べつに何も変わってないし、何も改善してないはずだよなあと…胸に深く刺さるものがあった。

なにしろ死ぬかもしれないとなったら、人はこうなるのだ、目の色が変わるのだと知ったはずではなかったか。管理・監視を内面化し、権力装置の一部と化すのは、自分も含めてそうだったじゃないかと、忸怩たる思いで認めるよりほかなかった。あれほど口うるさく言ったのにまるで聴いてくれなかったパパ活の女もキモイおっさんも、路上からすっかり消え去った、人間の言うことは聴かないのにウィルスの言うことなら聴くのかよと、橋本愛がブチ切れる。そうなのだ、それが我々というものだ。そういうのを、時間の経過を経て、すっかり忘れてしまえるのも幸福なことだけど、幸福を謳歌してるだけではダメなのでは…?と、諭されたような感じだ。