「AKIKO YANO & MARC RIBOT」1st Show(ブルーノート東京)


硬質でまじめで一本気な男気気質なメタリック・ブルース・ギターとピアノと矢野的歌唱。たとえばレイハラカミとかくるりの岸田とかと矢野顕子が、共同作業として何かやるというときは、たぶん演奏の瞬間というよりはもっとその前段階での、曲を立ち上げる手前で色々とやりとりが生成するんだろうし、そこに相互刺激もあるのだろうけど、今回みたいなマークリボーみたいな人とやるっていうのは、もちろん前段階刺激もあるだろうけどもっと、ライブ的な手探りな、完全に抜き身で切り合うような厳しいテンションな感じになるのではないか?などとぼんやり想像してたのだけど、実際は、そうでもあったような、そうでもなかったような、まあどちらでもない感じに思った。。でも全体の基調がダークなブルースフィーリングで、矢野顕子もマークリボーもどちらも情念的に内省的に遠慮なくやりたいようにやってる感じで、要するに二人とも「濃い」ので、全体の雰囲気としては相当濃くて重たいムードの色調が印象的だった。とはいえアンサンブルはまるで喧嘩せず、むしろ決まりすぎなほど整合感ばっちりで、破綻とか突きぬけへの意志とかも特になく端正な演奏で、器楽的な要素の多い感じなので常に細かいところに集中力を要求されるところが多く、そういう表情を聞き取りながら矢野的世界に佇むという事で、結構くたびれたことはくたびれた。でも演奏中はずっと、ほんの些細なグルーヴにも過剰なまでに反応してしまうような神経になってるので、とても活性された気持ちの良い疲労感で満腹度も高かった。


それにしてもマークリボーのギターの粘るような狂おしいような生々しいサウンドのうつくしさが実に素晴らしく、あんなにべたにギターの演奏を聴いたのが久々に思った。セッティングとかトーンコントロールも見事で、というかギターの音が素晴らしく、ちょっと洗練されすぎにさえ感じる見事さであった。僕はマークリボーってそんなに意識的に聴いた経験がないのだが、ラウンジリザーズは聴いてたし昔ライブも一回見てるしトムウェイツもまあ少しは聴いたし、中古盤を漁ってそれ界隈にぶつかる事もあったのでそれなりにはイメージがあったけど、今までのイメージとしてはなんかカッコ良すぎるっていうか、正直そんなにすごいのかどうかどうなのー?という気持ちの方が強かったところもあったのだけれど、でも今日の生真面目な感じさえする演奏を聴いたら、ああこういうのならすごく良いし、ああいうマトモに向かい合う演奏をもっと聴きたいなあと思った。


でも「本気」というものをテクニックでパッケージするのか「パッケージ」というものを人間の本気度で突き破っていくのか、そのあたりはいつも微妙だ。矢野顕子は色々な人とコラボレーションする事にすごく積極的な人だが、自分の「矢野顕子的な文体」はもう、驚くほど頑なに、頑固なまでに変えない人だなあといつも思う。なんというか、それは結構重たいものだろうなあと思う。歌詞に、子供の頃の記憶が出てきたりすると、余計にそう思う。