購入


購入して、商品を手にしたときの、ある種の味気なさというか、こんな筈ではなかった、という感覚は、何かを購入した経験さえあれば、誰でもおぼえがあるのではないだろうか?ここで言いたいのは、商品自体への不満、誤解や想像とのギャップから来る失望感、というような事ではない。そうではなくて、購入した事で必ず生じる、自分と購入品との間に不可避的に生じる、ある感触の事である。対象と自分との間に、装われた一応の関係が生じて確保されてしまう事の欺瞞性というか。娼婦と客との白々しい30分間と同じような感触が、購入品と購入者との間には、必ず生じるのではないだろうか?というか、そもそもこのような閉鎖的な関係の確保を欲していた訳ではなかったのに、手にしたものはそれでしかなかった、という失望感である。大抵の場合、購入者は商取引を通じて、その向こう側へと高く飛び越えていきたいと思っている筈なのに、結果は往々にして、その正反対となる。