CRTモニタ


約十二年前に買った19inchのCRTモニタがあって、最初は実家でパソコンと一緒に買って使っていたが、何年か過ぎてパソコンもその後何台か買い換えて、モニタもずいぶん前から液晶が安くなったのでパソコンと一緒に買ったりもしたら、ブラウン管のでかいモニタはものすごく邪魔で、しかしまだ使えるのでぽいと捨てるのもしのびないので、結局寝室に持っていって古いビデオとコンバータ経由でテレビやビデオを見るのに使っていてさらにそれから何年かが過ぎて、でももう、さすがにいいかげん邪魔なのでもう捨てようということになった。もちろん最近はリサイクル法みたいなのがあって、そういうのをタダで捨てる事はできないので、調べてみたらモニタは処分代として4200円かかるのだという。うぇええー4200円とはずいぶん高いなあと思って、試しに近くのリサイクルショップに電話して19inchのブラウン管モニタは引き取ってくれますか?いくらでもいいしタダでもいいんだけどと聞いたら、それだけ古いとタダでも引き取れないです。ウチが実費いただいて処分させていただく事はできますけど。大体4〜5000円くらいかかっちゃいますと、おんなじような値段を言うので、うぇーこりゃダメだぁどこも一緒だぁと思ってじゃあいいですと言って電話を切る。それで結局、おとなしく決められとおりの手順で普通の手続きで処分して捨てようということにして、まずメーカーに連絡をした。メーカーに連絡したら、翌日になってから指定の口座に4200円振り込めという案内が来た。口座番号が書いてあって、振込手数料は負担せよと書いてある。そのときに振込人名義として、自分の名前の前にスペースを空けて「PCリサイクル」と入力してくれと言う。うえぇえーめんどうくさいなあと思ったが、まあいいや言われたとおりにしてやろうと思って銀行のATMに行った。銀行のATMに入って画面の案内にしたがってお手続き下さいと言われて振込みをはじめたが、そしたら振込む金額と口座番号はちゃんと控えて持って来たのでわからなくはならなかったのに、振込人名義の前に、何という言葉を入れるんだったか?それを控え忘れて、その場でそれがどうしても思い出せなくて、少し悩んだが仕方なくその日は振り込めなかった。家に帰ってから確認したら、うあぁ!そうだ振込人名義の前にスペース空けて「PCリサイクル」だ!と判明してさすがに悔しかった。うえぇーすごい時間の無駄だったなぁーと思ってうんざりとした思い。そして翌日、今度はちゃんと、無事振り込むことができてこれで一安心と思ったが、よく考えたらまだ金を振り込んだだけで何も終わってないのでこれからどうなるんだっけ。振込んだことの証明はどうやって送られてくるんだっけ、この後の展開がどうなのか、今後のことが一切わからないなあと思って。あれぇえー?と思って、それから家に帰ってもう一度確認した。そうしたらこのあと、しばらくしてから、一週間後に領収書と着払い伝票が送られて来た。それが送られてきたらその後でその内容を見てそれを梱包したモニタに貼って送れという事らしい。そうかぁ…と思ったが、えぇ?って事は、これからあのでかくて重いモニタを、自分で梱包するのかよと思って、うわぁーめんどうくせぇなあぁぁとげんなりしたが、でも気を取り直してその頑張ってでかいビニール袋を買ってきて、それを広げて袋の片側にはさみで切り込みをいれて袋を広げて一枚の布みたいな状態にして、それを何枚も重ねてモニタの上に風呂敷を何枚も被せていくようにして、ところどころをガムテープで貼って固定させて、もちろんそのビニールを巻きつける前にモニタの裏側から出ているケーブルをまとめて縛ってガムテープで本体に貼り付けてから、ビニールを巻きつけた。ビニールはどんどん重ねて巻きつけられ、まるで人の周りにトイレットペーパーを巻きつけてミイラにするみたいな感じで、モニタにビニールがぐるぐる巻きになってそれがさらにガムテープでぐるぐるにされたみたいな状態にして、これでモニタを梱包できて出荷準備の完了にした。それができてからエコ郵パックの集荷お願いしますと電話したら、いまから二時間以内にお伺いしますがもうお荷物のご準備はできておいでですかと聞かれたので、はいできてますビニールでくるみました。と答えたら、ビニールは薄手のものだと破れやすいので二重にしていただけましたか、と言われて、うぇえー二重ですかぁ二重にはしてないです、じゃぁこれから二重にしますと答えた。それではよろしくお願いしますと言ってさらにモニタにビニールをぐるぐると巻きつけ始めた。いつのまにか妻までが僕の隣で手伝いでぐるぐると巻きつけをやっており、夫婦ふたりでビニールをずっとぐるぐる巻きつけ続けた。ガムテープが使い切ってしまったので、よしこれでもういいだろうと思ってその白く巻かれた妖しい箱状のものを玄関先までずるずると引き摺っていって、あれから領収書とともに一週間後に送られてきた伝票を最後に貼った。これでもう完全にこの家を出るしかない状態になって、玄関のチャイムがなってドアの向こうにめがねをかけた人が来たのでこれですと言ってそれを渡した。ものすごく重いので大丈夫ですか?と聞いたが大丈夫ですとの事で、よろしくお願いしますと言ったらめがねの男がひどい中腰のへっぴり腰でその人は僕のCRTモニタを両手で抱えて、そのままよいしょっと言って立ち上がり、よたよたとドアの外に出て、片手に判子の押された伝票を持っているのを僕に見せて、それを僕に受け取れと目で合図するので僕はその紙片を引っ張ってそのめがねの指の間から抜き取るようにして受取った。めがねはそれを見ると無言のままCRTモニタを両手で抱えたままで、そのままよろよろとドアの向こう側へ去っていった。僕は玄関のドアを閉めた。しばらくしてもう一度ドアを開けたらCRTモニタはもう既になかった。