調味


今日はけっこう寝てた。夜になって起きて、いままでグダグダとしていたが、もうちょっとしたらまた寝よう。ビールはゆっくり飲んでいると半分も残っているのにすぐに温まってしまって、もう飲む気がなくなってしまう。だから小さめの缶を買った。そしてなるべく早めに、少し慌てて飲む。昨日の夜はビールを何杯飲んだのか。その後で肉がものすごかったので赤ワインにした。ものすごい油っぽさに、山葵をのせたり、大根おろしと一緒にしたり、キラキラと光る油の中に唐辛子を炒って、赤みがフライパンの上で黄金色の油に薄く混ざり合ったり、香草を乗せたり、ぎらぎらとした油の表面がほぼ隠れるくらい大量に胡椒をかけて、山椒もかけたり、肉が焼ける音を聞いているのか。火の強さが場所によって違うから、網の方をぐるぐると回す方がいい。いまは蕎麦が食べたい。それも安い立ち食いの蕎麦が食いたい。最初から茹でてある麺を温めてつゆに浸すだけのヤツ。味噌汁がほしい。味噌汁は昔は大豆を潰したときの殻が混じっていて、それがお椀の底に沈んでいたが、最近の市販味噌ではそんな事はない。最近の味噌は味噌というよりは味噌汁のもとみたいなもので、ダシというかウマミもちゃんと練りこまれていて、お湯で溶かすだけのものである。でもそれはどうでもいい。味噌汁は僕は子供の頃からとても好きだったがなぜだろうか。子供は味噌汁をあれほど好きなものだろうか。僕は味噌仕立てや醤油仕立ての、しょっぱい料理が昔から好きで、甘いものはそれほど好きではなかった。甘辛い味付けが苦手だった。これは今でもある程度そうかもしれないが、でも今ならそれはそれでおいしいとも思う。子供の頃の方が許容量は狭い。子供の頃味噌汁は好きで、味噌汁の具としてはわかめ、ねぎ、豆腐、油揚げ、などが好きだった。当時苦手だったのは茄子、ジャガイモ、キャベツなど野菜が全般的に駄目。今はとても好きなので、これらはやはり子供の味覚で嫌だったのだろう。そもそも、味噌汁の椀のなかに、具が大量に入っているのがうつくしくないと思っていた。味噌汁と具との割合には適切さが厳然としてあると子供の頃は信じていた。豆腐などはそのようなアクセントとして味噌汁に浮かんでおりしかもうまい。わかめなど色合いも味も食感もじつにうまい。しかし油揚げなど、なぜこれが美味いのかを考えて、汁にかすかな油分を浮かべさせることの魅力ということを当時からぼんやりと考えてもいた。これはたぬきそばについても同様だった。また、ネギについてもずいぶんと考えた。ネギがうまいとはじめて思ったのはたぶんそばつゆのネギでそう思ったに違いない。ネギはそうだ。最近だとラーメンを食べたいと思う事はめったにないのだが、でもある瞬間急に、何かもよおすかのように食べたくなるときはある。博多トンコツのような、ああいうものを急に食べたくなることがある。白濁したスープの中に紅しょうがとか高菜を大量にのせるような感じの。そして固めの素麺みたいな麺の。そういうときでも別に無理してでも食べに行こうとしたり、そこまではない。ラーメンも、想像していたとおりに美味しいと思ったことはほぼない。蕎麦のつゆは、ほんとうに美味しいと思うことがある。酒を飲んで、最後蕎麦を食うと、すごく美味くてちょっと背筋が伸びるというか、酔いも醒めて、ああ、これはじつにおいしいと思う事がある。それで蕎麦湯までいただくと、湯での満腹感もあり、たしかな満足感があって、そういうときはすごくいい。でも最近はあまりそういうことも思わなくなった。酒に弱くなったわけではないけど、なんかすぐ腹がいっぱいになって、飽きてくるというか、もう惰性で飲んでいるような事もある。料理とは、まず何よりも習慣であり、生活であると思う。それが文化の基本としてある。したがって、好きなものを好きなだけ食べているようでは、そこには文化の姿はない。そのように気の赴くままに作られたものを料理と呼ぶことはできない。何でも、ほしいものを手当たり次第に、すぐに入手して、すぐに口に運んで、すぐに飲み込んでしまう下劣な風習を私は断固批判する。だいいち、お前がそもそも、そうやって平然と誰彼に頭を下げる事もなく当然の如く人前でものを食う資格のある人間なのかどうか、一度胸に手を当ててよく考えてみたらどうか。このままでは今まで培ってきたたくさんのことが皆ほろんでしまうことになるだろう。あと、残された時間で味噌汁の話でまだ言い足りないことをもう少し書こうか。でももういいかな。味噌汁はおいしいので最近は朝は、味噌汁だけいただいて出勤することが多い。暑いので、汗をかくが、それでも味噌汁はうまい。休日はちゃんとうまいものを食べた方が良いのだが、なかなかいつもサボってしまって、あまり食べてない。油っぽいものを食べよう。生野菜とオリーブオイルとデュラムセモリナとスパイスのヤツで指で摘んで口に運ぶ。またそして酒を飲んだらまた全身にじっとりと汗をかくかと思うとまた少し嫌な気分になる。でも無理してでも食べよう。思いついたものをなるべく食べるようにして元気に声出していこう。