女給


空いたお皿をお下げします。うろうろしています。胡乱な動きをする女です。そう、私は女給です。永井荷風が描いた君江の血を継ぐもの。徘徊します。目線を移動させて、あたりの様子をうかがいます。口元に笑みを浮かべます。まばたきはしばらくやみます。たいていは、店の奥の突き当たりに突っ立っています。用事があれば、そっちに目を向ければいいんです。私はすぐ気づきます。用があればすぐ言ってくださればいいんです。おかわりなら、目を向けてくれさえすればいいんです。それで私はひらりと注文を告げにうごきます。すぐにお盆にのせて、ご所望の品をおもちします。そうしたらまた、なにごともなかったかのように、さっきのとこに私はまた突っ立っています。まかないをいただいたあと、一人でこっそり、お盆の持ち方の練習をしているんです。